SCENE3 意外と普及していないジェネリック医薬品 病院にとってのメリットは?

 「ジェネリック医薬品って、知っていますか?」といったテレビCMを見たことがあると思う。ジェリック医薬品について深く知っていると、現場で活用できる場面があるかもしれない。

 外来待合室で先日退院した患者さんに会った奈須は、ジェネリック医薬品について質問されたが、答えられなかった。病棟に戻った奈須は、薬剤師の岡田にジェネリック医薬品についていて聞いてみた。

奈須:岡田さん、ジェネリック医薬品について患者さんに質問されたけどうまく説明できなかったの。少し講義をしてもらってもいい?

岡田:ジェネリック医薬品って、昔はゾロって呼ばれていたんだよ。先発医薬品の特許が切れると、ゾロゾロ発売されるから、ゾロなんだ。まあ、ジェネリック医薬品は、後発医薬品と呼ばれたり、ゾロと呼ばれたり、さまざまだね。

奈須:ゾロって言われると、イメージが悪いわね。

岡田:実際に、イメージを悪くするための、先発医薬品メーカーの戦略だったかもしれないけどね。ジェネリックとは、ジェネリック・ネーム(Generic Name)という薬の”一般名(成分名)”からきているんだ。例えば、「ガスター」であれば「ファモチジン」が一般名となる。実際に、処方せんにファモチジンと書いても処方が可能なんだ。普通は、商品名を処方せんに書いているけど、一般名を書く場合がある。日本でも、診療報酬改定で一般名で処方せんを書くと加算が着くようになってから、一般名で処方せんが記載している医療機関が増えてきている。そうすると、患者は薬剤師と一緒に医薬品を選ぶことができるようになるんだよ。

奈須:一般名で処方せんを発行するのっていいね。患者さんが薬を自由に選べるようになるんだね。

岡田:奈須さん、これで本当に患者さんが薬を選べるようになると思う?

奈須:なんで?

岡田:那須さんが言う「選択できるていいね」と言うのは、よいものの中から選択できると言うことだよね。ジェネリック医薬品は、全ての銘柄が良い製品とは限らないんだよ。ジェネリック医薬品は、先発医薬品のコピー商品と言うことに問題がある。コピーといっても完全なコピーではなく成分が同じと言うことなんだよ。ブランドもののバッグで説明すると、香港や中国でブランドもののバックのコピー商品が売られていると聞いたことがあると思うけど、見分けがつかないものからひどい作りのものまで、質に下がるよね。ジェネリック医薬品でも、質についてはばらつきがあるから、簡単に特許切れの医薬品をジェネリック医薬品にすることはできないんだ。そのことを表す事件が先日あったでしょ。製造過程で違う薬物が混入して患者が亡くなったといった事件だよ。

奈須:病棟で使用するジェネリック医薬品は、どうやって決めているの?

岡田:病棟や病院で使用することが決まったジェネリック医薬品は、病院内で患者さんに処方することにより、トライアルをしてるんだよ。薬事委員会で試験採用された医薬品で、一定期間様子をみているんだ。病棟指導の時には、患者さんに薬が変わって変化がないかといったことも聞いているんだよ。試験採用の時に、先発品と効果に差が出ないようであれば、病院で使用する医薬品のリストに載ることになるんだ。そんなことをしながら薬について検証しているんだよ。

奈須:結構厳しくチェックされて、院内で使われるようになるのね。患者さんに何かあってからでは困るでしょ。病院は、患者さんの病気を治すための場所だからね。

ーちょうど、ナースステーションに医事課の石崎が入ってくる。

奈須:石崎くん、ジェネリック医薬品が増えると、病院は得するの?

石崎:DPC/PDPSをやっていれば儲かるけど、出来高の病棟では儲からないよ。

奈須:なぜ?以前岡田さんが、ジェネリック医薬品は値引率が高いといっていたよ。岡田さん、そうでしょ。

岡田:確かに、値引きはね。

奈須:何か引っかかる言い方ね。

石崎:ジェネリック医薬品は値引率は大きいけど、元々の価格が低いから、病院にとっては利益が低くなるんだよ。例えば、薬価100円の先発医薬品を15%引きの85円で購入していたとすると、15円が利益だよね。その薬のジェネリック医薬品がやっか40円だとして、30%引きの28円で購入したとすると、12円が利益となる。確かに値引率は大きいけど、利益額は減ってしまう。そうなると、病院では利益額が大きくなる薬剤を使いたくなるよね。

奈須:確かに、先発医薬品を使っている方が得になるわけね。

岡田:ジェネリック医薬品が普及しない背景には、さまざまな問題があって、メーカーや製品によって質がバラバラだし、先発品メーカーでは、都道府県に何人もMRを配置しているけど、ジェネリック医薬品メーカーは、関東に1人や2人といったことも珍しくない。薬剤部に来るのも半年に1回かなあ。トラブルがあってもMRが来ないこともあるからね。

奈須:薬が安いことには裏があるのね。残念だわ。

岡田:ただ最近では、DPC/PDPSや地域包括ケア病棟など薬剤の包括病棟が増えていることで、全国的にジェネリック医薬品の採用が多くなっているよ。後発医薬品体制加算も85%以上を算定している病院が多くなったことも考えるとジェネリック医薬品の利用は普通になったといっても過言ではないよ。

 厚生労働省が進めるジェネリック医薬品の推進は、薬剤が包括になる病棟の増加や経営が厳しい病院へのジェネリック医薬品の処方へのインセンティブである一定の結果を出した。しかし、品質に関する事件が起きたことは医療界に対して大きな衝撃を与えたことは間違いない。