SCENE3 診療報酬を分析する 看護管理に活用しよう

 診療報酬点数についてわかってくると、次に知りたくなるのが診療報酬点数の分析や業務への活用方法である。診療報酬点数を分析するのは、医事課の仕事と思っている管理者が多いと思うが、それは間違いである。確かに、データを作るまでは、医事課の仕事かもしれない。しかし、考察するのは各部門の管理者の仕事である。

 石崎が奈須に、診療報酬点数の分析方法について教えている。最近の奈須の成長を見て、石崎から要望してのことだった。同期の成長と出世は、ライバルとして刺激をもらえると感じているからだ。実際に石崎は、奈須に刺激をもらいマネジャー、人格の両面からも成長している。

石崎:今日は、診療報酬点数を使った収入分析を教えよう。最近、奈須の勉強意欲と管理者としての成長に、刺激を受けているよ。その内に、看護のことも教えてよ。

奈須:分かったわよ。今日もよろしくね。

石崎:それでは、診療報酬点数からどのように分析するかを説明しよう。医事課では、レセプトが終わると月次の収入表を出力している。この月報(図33)を基に分析するといいかもしれない。月報は、外来収益と入院収益、それに入院と外来を足し合わせた医業収益の3つがある。それぞれ、金額や点数で集計が可能となっている。また、場合によっては、病棟ごとに集計を出すことも可能なんだ。この表は、簡単に言うと外来と入院、その合計の診療報酬点数表の分類別に集計されているんだ。だから、外来の検査でどのくらい収入があったかといったことが分かるようになる。

―石崎は図(図33)に矢印を入れた。

石崎:いま矢印を付けた部分が、入院の単価に影響を与える部分なんだ。入院料、医学管理、検査、画像診断、リハビリテーション、手術といったものは、入院における単価へ大きな影響を与える。この部分について着目していくと、病棟収益の状況が分かってくるんだ。ちなみに、外来は、診察料、医学管理、検査、画像診断、リハビリ、処置が単価に影響する。診療科によって違いはあるけど、大体同じだよ。

奈須:これをどのように分析するの?

石崎:簡単に言うと、外科病棟なのに、手術の収入がゼロだったらどうする?

奈須:それはおかしいわね。

石崎:手術がゼロだったら、本当に、手術がゼロかどうか調べるよね。そういったことが、第一段階だよ。まずは、医学管理や検査、画像診断、リハビリテーション、手術などに関する収入が適切であるか考えることだよ。この時には、臨床現場の感覚として、現在の収入が妥当か考えることが重要なんだ。無理な収入の増加は、臨床の現場がやる気をなくすからね。あとは、収入の総額で見た方がいいのか、患者一人当たり、入院一日当たりで見た方がいいのか、様々な見方があるね。これは、数字の慣れによって違ってくるよ。

奈須:やっぱり慣れることなのね。

石崎:次に考えることは、入院料の部分だ。入院基本料は、算定できる点数が決まっているが、初期加算は、「入院から14日まで」と「15日から30日」、それ以降では、点数が違ってくる。当然、入院から14日までが多いと単価が高くなる。逆に、単価が低いということは、退院できない長期の患者が増えている可能性がわかるんだ。リハビリテーションも絡めると入院料の収入が高く、リハビリテーションの収入も高いことが分かれば急性期リハビリテーションを多くやっている病棟だということが分かるんだ。逆に、急性期リハビリテーションをやっているつもりでも入院料収入が低く、リハビリテーション収入が低いとすると、この病棟は急性期リハビリテーションを行えていないことがわかる。この分析を考察する時に重要なのも、現場感覚だね。臨床現場をわかっていないと、内科病棟と外科病棟を比較して議論してしまうようなことにもなるんだ。

最後に、シミュレーションをしてみることかな。入院基本料なんかで、この加算をとったらどの位の増収になるかと検討することがある。毎日加算になるものであれば、入院日数に加算点数をかければ収入になり、入院した時に算定できる点数であれば、月間の入院患者数でかけると収入がわかるね。

奈須:なるほどね。病棟の収入について、何がどうなっているかいろいろな分析ができるのね。現状が分かっていると、管理に活かすこともできるのね。

 診療報酬点数の分析は、難しいと思われがちですが、先月より今月の方がよくなっている、悪くなっているといったことを感じることが基本になってきます。そして、さまざまな病院の特性や診療科、治療ステージがあります。これからも診療報酬点数の分析に大きく関係しますので、まずは簡単な部分から取りかかり、数字と分析に慣れていくことをお勧めします。基本は、先月よりも今月の方が良い数字となることです。