SCENE2 30分で診療報酬アレルギーを治す! 診療報酬を読み解くコツ

 診療報酬点数表を読み解くための入門の本というのはほとんどない。唯一、私が書いた「医療費のしくみ、日本実業出版社」だけかもしれない。そのため、診療報酬点数表について理解したいと思っても勉強することは容易でない。そこで、ここでは診療報酬点数表を簡単に理解するためストーリーを進めたい。30分で診療報酬点数表のアレルギーから解放される“保存版診療報酬入門”である。

 奈須が、石崎に診療報酬点数表を教えてもらうために、急いで医事課にやってきた。昨日から診療報酬点数について勉強をはじめ、診療報酬と自分の管理が結びついてきたため、うれしくて仕方がないのである。

奈須:石崎君、早く教えて!

石崎:ちょっと待ってて、レセプトの返戻で1件だけ電話させて。

―電話が終わり

奈須:レセプトの返戻って何?

石崎:レセプトは、保険者に請求しただけでは、お金にならないんだよ。

奈須:そうなの?

石崎:レセプトを請求して、保険者からOKが出た時点で支払われることになるんだよ。さっきのは、返戻だけど、査定っていうのもあるんだ。

奈須:そうなんだ。知らなかったな。

石崎:看護師で、返戻と査定を知っていたら、すごいよ。レセプトの返戻とは、診療報酬点数がこのままでは支払われない状態のもので、請求の不備やミスがある場合にレセプトが指し戻されてくる。これは、レセプトを直して送付すると支払われるんだ。査定は、請求に対する減点だよ。査定は、レセプトに病名がない、つまり、医療行為に対して適切な病名がないことや診療ガイドラインから外れた診療をしている場合、薬の添付文書で規定されている適応病名以外で治療している場合にやられる。返戻は黄色信号、査定は赤信号だ。医事課にとっては、仕事の成果として最低のことだよ。

奈須:カルテに書いてある病名って、そんな意味があったのね。

石崎:そうだよ。主病名以外で病名が書いてあるのは、レセプト用の病名であって、レセプト病名と呼ばれるものなんだよ。それじゃ、本題の診療報酬点数表の見方を教えよう。

―石崎は、診療報酬点数表を取りだした。

石崎:診療報酬点数表は、見たことあるよね。

奈須:あるよ。すごく厚いよね。

石崎:確かに、厚いね。でも使うのは、数十ページだよ。もしかすると20ページ位かもしれない。覚えているのもそれくらいかな。

奈須:そうなの?なんで?

石崎:医事課の職員が全部覚えていると思った?

奈須:思ったわよ。でも、どうして覚えている部分がそんな少ないの?

石崎:覚える必要がないからだね。でも、経験で少しずつ覚えていることは増えているけどね。要するに、コツがあるんだ。

奈須:教えて、教えて!

石崎:まずは、診療報酬点数表の構造を理解することだね。

奈須:以前説明してくれた(図28)(「師長の病棟経営数字」5.診療報酬点数表の構造と医療費のしくみ)ね。

石崎:そうだよ。診療報酬点数表は、基本診療料と特掲診療料に分かれている。基本診療料は、医療の基本料金で、外来であれば初診料と再診料と説明したよね。

奈須:入院は、基本診療料として入院基本料が毎日算定できる基本料金と説明していたわね。

石崎:そうそう。特掲診療料が医療行為を行った分だけ算定できるようになっている出来高部分だ。診療報酬の計算の基本はその日単位であり、基本診療料と特掲診療料を足し合わせたものだね。

奈須:完全に思いだした。

診療報酬点数本の中身

石崎:診療報酬点数表の中身を説明するよ。診療報酬点数表を開くと(図29)のようになっている。ページの中に縦線が入っていて、左に診療報酬点数が書いてある。例えば、初診料であれば、A000となっていて、初診料○○○点と書いてある。このA000が索引番号のようになっている。そして、その下に注と書いてあり、算定方法上の注意などが書かれているんだ。右側には、算定上の留意事項が書いてある。これを読むことで、診療報酬がどのように算定できるかが分かるんだ。一般的には、ページの左を読んでからページの右を読むんだよ。左ページだけで分かれば、右ページは特に読まなくても大丈夫だよ。あとは、通則というそれ以降の部に共通することが最初に書かれているから、そのルール通りにすれば診療報酬点数表を理解できると思う。

奈須:でも難しくない。

石崎:そうかもね。ただ、全部読む必要はないよ。自分の病院に必要なところだけ読めばいいんだよ。うちの病院のところだけを覚えるとすれば、基本診療料の場合、外来であれば初診料と再診料、入院であれば一般病棟入院基本料と加算の部分だけ分かれればいいはずだから、総ページ数としては、10ページくらいじゃないかな。特掲診療料は、管理料や指導料と処置、検査、画像診断のいくつかのポイントを覚えておくといいと思う。管理料や指導料は、カルテに記載されている「○○管理」や「○○指導」といったものが、大抵算定できるものだから、書いてあったら診療報酬点数表で調べてみるといいね。処置は、毎日行っている処置で、とれるかどうか病棟の事務に聞いてみるといいね。たまには、病棟事務とラウンドして、とれるかとれないか議論してみるのもいいよ。一度、病棟を回ろうか?

奈須:うれしいけど、処置のときは、男性が一緒に回るのは困るわね。

石崎:確かにそうだね。あとで、病棟の主任に伝えておくよ。さて、検査で覚えておくのは、生化学検査かな、脂質や肝臓の検査などは、5項目、8項目、10項目で包括になっている。医師が20項目とかオーダーすると赤字になってしまうんだよ。だから、できるだけ、これらの項目にそろえてもらえるとうれしいね。画像検査については、同じ月内に同一部位に対してCTやMRIをとるといずれかが半額なるといったこともあるので、そんなルールを知っておくといいんじゃないかな。そういったことが、書かれているので、読んでみるといいよ。さっき言った部分は、全部で50ページないからね。大体このくらい知っていると、看護師としては知っているほうじゃないかな。

奈須:なるほどね。すごく安心したわ。あとは、診療報酬がとれる材料ってどんなのがあるの?

石崎:SPDをやっている病院だと算定できる材料にシールがあるけど、うちの病院はまだSPDを導入していないから分かりづらいね。今度、算定できる材料については、病棟事務に、材料のパッケージに印をつけるように言っておくよ。材料については、価格が安いものについてはほとんど算定できないと思っていればいいよ。ただ、オムツは自費請求できるからね。

奈須:そうなんだ。結構やったことや使ったものを書いているけど、算定できていないものもありそうね。昔からの慣習で翼状針の数なんか書いているけど、とれなさそうね。

石崎:えっ!翼状針をカウントしていた?それは算定できないね。一度、見直そうよ。

奈須:分かったわ。

―石崎がさらに診療報酬点数表について説明する。

石崎:診療報酬点数表について、外来から簡単に説明すると、例えば、初診料(図30)であれば、医療機関の外来の診療時間か時間外かによって点数が変わるんだ。外来の診療時間内の場合、6歳未満であれば加算がつく、6歳以上であれば加算はつかない。時間外は、6歳未満か6歳以上で点数が違い、さらに時間外も診療時間終了から22:00までの時間外と22:00~6:00までの深夜、日曜日などの休日といった加算がつくんだ。これに、特掲診療料として検査などの点数が積み上げられていく。

 ちなみに、検査については、検査料と判断料(図31)が算定できるんだよ。検査料は、血液検査などの検査の手技に対する点数で、それに、判断料が月に1回算定できるんだよ。診療報酬が分かりづらいのは、こういった、○○の点数を算定すると、□□の点数も算定できるといった記述が多いことなんだ。さっき診療報酬点数本の見方でも説明したけど、算定上の留意事項に書かれているからよく読めば大丈夫だよ。

 入院の診療報酬点数は、外来と同様だよ。入院に関しては入院基本料、もしくは、特定入院料に入院基本料等加算が算定(図32)できるんだよ。入院基本料は、一般病棟入院基本料や療養病棟入院基本料などで、特定入院料は、ICUで算定する特定集中治療室管理料や回復期リハビリテーション病棟入院料などだよ。これらの入院料の特徴は、入院基本料が特掲診療料を出来高で算定できるのに対して、特定入院料は、手術やリハビリなどを除いてほとんどが包括になることだね。入院基本料等加算は、NSTの栄養管理加算や高度な褥瘡管理である褥瘡患者管理加算などだよ。この加算も結構大きいよね。入院の医療費は、この入院の基本診療料に特掲診療料が算定できるんだ。特掲診療料は、外来と入院で算定方法は変わらないんだよ。

奈須:なるほどね。外来も入院も基本は変わらないのね。

石崎:そうだよ。だから、一度、基本を押さえると後々役に立つよ。

奈須:今日は、ありがとう。

 診療報酬とは、医療費の支払いのことです。現在の日本では、個別出来高払方式という医療行為を行なった分だけ支払う方式です。海外では、診断群別の疾病別の包括支払いが主流になりつつある中、独自の診療報酬支払方式をとっています。しかし、最近の日本では、DPCという診断群別の包括支払方式も採用され、診療報酬もグローバル化しています。日本の診療報酬の特徴は、2年に1度、点数改定することです。この診療報酬改定は、病院にとって、大きなイベントとなっています。また、診療報酬改定があれば、師長の仕事にも影響を受けます。そこで師長が診療報酬改定に対応できるようになるためには、現在、自分が管理している病棟などに関連する診療報酬点数表を読み解くことにあります。基本は、あくまで基本診療料を理解することです。そこから、診療報酬点数に書かれた算定要件について理解し、自分がどのような現場の管理をすべきか考えることです。そこまでできれば、診療報酬について問題ありません。もっと診療報酬について知りたくなったら、診療報酬点数表をよく読んでください。