チーム医療における課題は、各医療従事者の仕事の範囲の定義です。この資格と仕事の定義は、昔からの課題であり、今後も続くことは間違いありません。
奈須の病院の同期で、慰労会を開催することになった。慰労会では、皆で夢を語り合っている。さて、中堅の夢とは何であろう?
石崎:少し酔ってきたな。
奈須:まだまだよ。
渡辺:そういえば、みんな何を目標に仕事してるの?おれって、野球やっていてプロ目指していたから、挫折した時にスポーツトレーナーになろうとして、理学療法士になったんだよ。最近、仕事に余裕ができてきたから、リハビリだけでなくスポーツリハやトレーナーもやりたいと思ってるんだ。今度、企画をリハ室の部長に提案しようと思っているんだよ。できれば、1年くらいアメリカに留学したいんだけどね。
石崎:すごいじゃん。おれは、特に資格がないから、事務部長か病院経営コンサルタントかな。
奈須:石崎くんがコンサルタントになったら、怪しいね。
山田:そうね。悪徳コンサルタントになるんじゃないの(笑)。
石崎:失礼な(笑)。
奈須:私は、看護担当の副院長かな。将来的には看護管理や病院経営を極めて、主任や師長に教えたいと漠然と思っているの。
山田:奈須は、最近、大人になったのね。私は、結婚して仕事辞めてもいいかな。できれば、スクリーナーになりたいけど、なかなか研修に行かせてくれないからね。
渡辺:山田もがんばれよ。技師長になるとかないの?今は、結婚して仕事辞める時代じゃないよ。
山田:でもね、どこの病院も検査の委託に侵食され病院内から臨床検査技師が減ってるのよ。だから、うちの病院も近い将来、委託が多くなり、臨床検査技師は相当少なくなると思う。そうすると仕事がきつくなるんじゃないかな。
石崎:まあまあ、暗い話は辞めようよ。おれが病院を大きくするから。そうすれば、検査件数も増えて臨床検査技師も沢山必要になるだろ?少なくとも生理機能検査は、委託できないんだから。
山田:そうね。エコーができるようになればいいのよね。
奈須:みんな、そういえば知ってる?近くの病院で、看護部長が事務部長になったっんだって。
渡辺:なんで、わざわざ事務部長なったんだろ。
奈須:そこの病院は、事務がしっかりしていなかったので、病院内の改革に事務部がブレーキだったらしいのよ。そこで、看護部長が、事務部長をやると宣言してなったと聞いたわ。
石崎:すごいね。確かに、アメリカの病院のCEOは、看護師という場合も結構あるって聞くから、そういう意味でもありだね。最近は、薬剤師や診療放射線技師などの事務部長も珍しくないからね。
渡辺:そうなんだ。そう考えると、おれもトレーナーの次は、事務部長になろうかな。
奈須:石崎くん、ライバル出現ね(笑)。
石崎:渡辺、やめてくれよ。お前が、事務部長になったら、事務が体育会系になって大変だよ。
―話題が変わり。
奈須:そういえば、仕事ってどう変わっていくのかな。昔は、ナースリハなんてあって、看護師が病棟のリハビリをやっていた時代や、薬の説明をしていた時代もあったのよね。でも、今では、リハビリは、病棟に理学療法士や作業療法士、言語聴覚士が来てくれるし、薬も薬剤師が説明して密な指導をしてくれるものね。退院の調整も、医療ソーシャルワーカーが社会福祉士の知識を持ってやってくれる。そんなことを考えると看護師っていったい何って考える時もあるのよ。
石崎:看護師って、そりゃあ、ナイチンゲールが言っていたような原点に回帰するんじゃないの?
奈須:環境整備や患者の安全を守ることで、自然治癒力をあげるってこと?
石崎:専門家でないからわからないけど、看護師がいなければ患者のそばで、患者を見守ったり、医療従事者の調整をする人がいないということだからね。やっぱり、看護過程をきちんとしていくことが看護の本質になる気がするよ。
奈須:確かにそういわれればそうね。将来は、アセスメントできず、患者個々の状態に応じた看護計画を立案できない人は看護師として生き残れなさそうね。
医療の将来は、管理やマネジメントというキーワードで要約できるのかもしれません。医療は感覚も重要ですが、いかに計画的で、効率的に提供していくかに集約されます。混沌とする医療現場には、管理やマネジメントが求められています。