SCENE7 意外と簡単!?原価計算の意味 直接費と間接費を理解する

 病院全体で取り組んでいる経営数字として、原価管理や原価管理といったものがある。病院においても原価計算を行う病院が増えてきていることは間違いるが、本当に病院に原価計算を導入する必要があるのだろうか。では、原価計算の原理と原価計算の活用について考えてみたい。

石崎:うちの病院も原価計算をすることになりそうだよ。

奈須:原価計算?何それ?

石崎:原価計算とは、サービスや物が作るにあたって、お金がいくら必要なのかを計算することだよ。この計算をすることにより、企業は商品の販売価格を決めたり、原価を下げたりすることができるんだ。奈須も料理するでしょう?その時に、材料がいくらかかってと計算しない?

奈須:・・・。

石崎:料理の材料を買う時に、いくら何でも値札を見るでしょう。

奈須:あまり考えなかったな。

石崎:今は、独身だからいいけど、結婚したら家計が破たんするね。

奈須:ほらほら、私のことはいいから、原価計算について教えて!

石崎:例えば、料理をするときにカレーを作るとして、「ルー300円、豚肉300円、ニンジン200円、玉ねぎ200円」というように、1,000円かかるがわかる。このカレーが5人分だとすれば、1人当たり200円となる。こんな計算をするのが、原価計算なんだよ。

奈須:ごはんのお米代が入ってないけど。

石崎:そうなんだよ。お米代もそうだし、水、ガスといったものも必要だし、料理を作った人の労力もお金で換算するんだよ。家庭だと料理を作る労力を金額換算しないから、仮にお米代や水・ガス代などを100円とすると、一人当たり300円の材料費でカレーを食べることができる。

奈須:外食と家で食べるのと、どちらがお得かも判断できるね。

石崎:するどいね。そういうことだ。判断ができるようになるんだよ。これを病院に置き換えてみると、ディスポ製品へ切り替えや、業者への委託についての判断に使えると思わない?

奈須:そうね。そういった判断に使えるということは、提案書に使えるということね。いいこと聞いた。

石崎:原価計算には、もうひとつ重要なことがあるんだよ。それは、必要とする費用(原価)を下げることヒントになるんだ。例えば、さっきのカレーの場合、野菜カレーにしてしまったら、豚肉の300円は必要ないよね。そうすると、1人当たり60円材料費が下げられる。そうすると、1人当たり240円だよ。安くなっただろ。

奈須:確かに下がったね。でも肉の入っていないカレーはなぁ。

石崎:じゃあ、鶏肉にしたら?とり肉が150円だったとすれば、1人当たり270円になるね。豚肉を価格交渉してもいい。そうやって原価を落とすための資料として原価計算は、使えるんだよ。

奈須:面白いね。もっと詳しく原価計算について教えてよ。

石崎:原価計算は、費用(コスト)を「人件費」「材料費」「経費」の3つに分けて、計算していくんだよ。病院であれば、人件費とは給与などの費用のことで、材料費は医薬品や医療材料など、経費は建物や医療機器の償却といったものが該当する。これが原価計算の基本となる。そのほか、直接費や間接費といった費用の見方があり、この直接費や間接費といった費用の見方があり、この部分が原価計算をわかりづらくしているんだよ。

奈須:その直接費と間接費って?

石崎:直接費とは、直接発生する費用のこと。例えば、医療機関で言えば、外来診察をした時に、外来担当の医師と看護師の分が人件費の直接費となる。一方、間接費とは、直接関係ない部分の費用の割り振りのこと。例えば、先ほどの外来診察であれば、事務部などの人たちの人件費をどこかに割り振ることになる。この部分の割り振りが、病院で一番問題になるとされるんだよ。俺の給料も奈須の病棟に割り振られるんじゃないかな?

奈須:石崎君の給料を私の病棟で負担?何それ!変ね?

石崎:仕方ないよ。本来は、会社や病院に利益をもたらすための原価計算であり、原価を下げる努力が重要なんだ。だから、病院で発生する費用をきれいに振り分けて行かないと利益につながらないよね。

奈須:そうすると、間接費が多い病院って、問題ってことよね。直接的な業務に従事していない人が多いわけだからね。

石崎:そうとも言えるね。できるだけ、間接費の比率を上げない努力は必要なんだ。間接費の比率が高いということは、それだけ無駄が多いと言えるかもしれない。特に病院は、直接従事する人が増えた方が収入になるしね。

奈須:それでは、石崎君をリストラすれば間接費が減るね。

石崎:それは勘弁してください・・・(笑)。

 原価計算は、現場に原価意識を持たせるためにはいいのかもしれませんが、計算に手間がかかります。原価計算を行っている病院でも、少したつ職員が慣れてしまい、原価逓減の努力をしなくなります。原価計算もほどほどがよいでしょう。