SCENE2 財務を簡単に勉強するには? 会議で困らない財務諸表の見方

 病院経営に深く関わっていく上では、財務の知識が必要であることは間違いない。しかし、師長はミドルマネジメントであるため、財務については概要を知っている程度で十分なのである。問題は、いかに簡単に財務を勉強するかということである。さて、財務の勉強をやり抜く秘策はあるのだろうか。

 マネジメンんとの勉強を始めた奈須は、数字アレルギーなこともあり、財務のところで行き詰まっていた。どうも財務の用語は難しいと感じる。そんな時、同僚の石崎が大学の商学部出身であったことを思い出した。早速、夕方に勉強会を開いてもらうこととなった。

奈須:ここ最近、マネジメントが面白いんだけど、財務で行き詰まっているの。財務ってすごく難解じゃない?

石崎:そうだね。財務について勉強し始めたころは、なじみがない用語が多いから、頭に入りにくいのね。大学の時には、苦労したよ。ちゃんと講義に出ていなかったからかな。

奈須:そんな状態で、私に教えられるの?

石崎:大丈夫だよ。成績はよかったし、簿記の検定試験も合格しているから。ところで、奈須は、何の教材で勉強しているの?

奈須:「MBAファイナンス」という本を使っているけど、どうかな?

石崎:難しい本を読んでるんだ。

奈須:入門書みたいだから買ったけど、読んでるうちに寝ちゃうの。

石崎:そりゃあそうだ。こういった本で出てくる財務は、財務が何であるかをある程度知っている人向けだからね。財務を学ぶには、多分、財務の基礎である財務諸表が読めるようになることがスタートじゃないかな。MBAは大企業向けだから、病院のマネジメントとでは規模が違いすぎる。ケースで表される財務諸表の数字の桁が大きすぎるのね(笑)。

奈須:そうすると、財務諸表ってどうすれば勉強できるの?

石崎:財務諸表を勉強するのなら、日商簿記3級の教科書と問題集を使うと理解しやすいよ。ちなみに、財務諸表は、貸借対照表と損益計算書、キャッシュフロー計算書などのことだけど、それは知っているよね?

ー奈須は、勉強会のノートをめくりながら石崎へ答えた。

奈須:この間の勉強会で聞いていたから覚えているわ。貸借対照表が一定点の状態を表すもので、損益計算書が一定期間の経営の成績を表す者になっているのよね。そう言えば、キャッシュフロー計算書ってどんなものなの?

石崎:キャッシュフロー計算書とは、一定期間の現金の流れを表すものなんだ。企業や病院は、赤字でも現金があれば破綻しないし、黒字でも現金がない場合は破綻してしまう。利益が出ている黒字の状態でも倒産するから、黒字倒産という言葉があるくらいなんだよ。どうして黒字で倒産するかというと、売上が上がっても、掛けでで取引(掛けとはつけのこと)される場合は、現金がもらえない。現金がもらえないと支払いができない。支払いができないと手形の決済ができず、不渡り2回で銀行取引停止となり、倒産になるんだ。奈須の立場で考えると、クレジットカードを使いすぎて、引き落とし日に銀行口座から引き落としができないということだ。ボーナスが入ることがわかっていても、クレジットカードの引き落としが先にきたら困るだろ。

奈須:クレジットカードが使えなくなるね。

石崎:これが企業や病院であれば、取引ができなくなるんだ。

奈須:そういうことであれば、いつもキャッシュフロー計算書を作っていればいいのね。

石崎:いつもとはいかないけど、企業や病院では、資金繰り表として事務長が管理しているよ。そうは言っても、企業と違って病院は保険から支払いが滞ることはないので、資金口をあまり気にすることはないけどね。

奈須:話は変わるけど、今回の話を総合すると、赤字の企業がやっていけるのは、銀行からの借入で現金が入ってくるからなの?

石崎:そうだよ。現金があれば、職員に給与が支払えるし、業者に仕入れの支払いもできるだろ。そうすれば、病院が経営破綻することはないよ。財務を勉強するには、まずはこんなところから入っていくのがいいんだよ。MBAファイナンスだと、財務分析が中心でしょ。財務分析は、先の先だね。

奈須:石崎くんはなんでも知っているのね。尊敬しちゃうわ。

石崎:事務系は、病院の管理に関することを何でも知っていないとダメでしょ。何でも知っているから、頼られるわけだからね。

奈須:ということは、師長も看護に関することを何でも知っているから、部下に頼りにされるってことね。

石崎:そうだね。奈須もいろいろと知っている人を頼るでしょ。

 財務を理解するには、医療と同様に用語に慣れることから始まります。。用語に慣れるには、本をたくさん読む、簿記の検定を受ける、株式を購入すると言ったひと工夫が必要です。