27 給料と人件費率 仕事熱心な2人が飲めば

 今日は、給料日。心なしか職員が浮かれている気がする。心なしか職員が浮かれている気がする。休憩時間に、聞こえてくる会話から、飲みにいく約束をする者や、買い物に行こうと考えている者がいることがわかる。奈須も日頃の感謝を込めて、石崎に食事でもご馳走しようと考えた。

奈須:石崎課長さん!今日、飲みに行こうか?いつもいろいろ教えてもらっているお礼にご馳走するよ。

石崎:おっ!いいねえ。寿司がいいなあ。

奈須:居酒屋にしてよ。お寿司は、私の安月給では、ごちそうできません。

石崎:冗談だよ。

奈須:じゃあ、19時に、いつもの店でね。

 給料日の職員の仕事ぶりは、すさまじい物がある。早く帰りたい一心で、休憩返上で仕事をしている職員もいる。今日は、残業なしで仕事を終えようと仕事をしていた。そんな矢先の16時、緊急入院があった。幸い、明朝一番の手術となるようなので、さほど残業しないで帰れそうである。新人にアナムネーゼの取り方を指導して、18時30分にステーションを出ることができた。

 病院御用達の居酒屋にて、

石崎・奈須:かんぱーい!

奈須:今日はごちそうするから遠慮なく注文してね。

石崎:そんなこと言っても、明日は仕事だからそんなに遅くまで飲まないよ。そういえば、うちの病院も人件費率が上がってきたな。このままいくと人件費に病院がつぶされるよ。

奈須:って何?今日も飲みながら教えてもらおうかな。

石崎:ええっ!せっかく飲みにきたのに?うーん・・・まあ切り出したのはこっちだし、ごちそうになるから断れないか。人件費率とは、紙に書くけど、7)のように人件費を医業収益で割りかえしたものだよ。一般的に、50%を超えると病院経営に良くないと言われている。実際には、診療が多様化しているから、病院の診療科構成や病床構成などによっても60%を超えても安全な病院があるけどね。

奈須:医業収益って、病院の収入だよね。

石崎:医業収益とは、病院の売り上げだね。よく分かってるじゃん。勉強の成果が出てるね。

奈須:この前、日総研のセミナーで教えてもらったんだ。人件費率もどんどん上昇していくってこと?

石崎:そうでもないよ。人件費率が上がらないようにするためには、人件費が下がるか、医業収益が上がるしかなきゃいけないよね。病院では、職員の入退職が激しいから、給与の高い職員が退職して、給与が比較的低い新卒などが入職すると、人件費が下がる。理想は、定年退職する職員と新卒の入職、それに昇給のバランスがとれるといいんだけどね。医療政策で医療費が抑制傾向にあるけど、大抵の病院では、患者が増えたり、検査が増えたりで、医業収益は伸びているんだ。だから、医業収益の伸びと人件費の伸び率が同じであれば、問題ないはずだ。現時点で、売り上げがどんどん落ちている病院は、相当厳しいかな。

奈須:それで、どんなに忙しくても人を増やしてもらえないのね。

石崎:看護師の場合は、そんなことないよ。看護師を増やして、看護体制をグレードアップさせれば、病院の売り上げ、つまり医業収益が上がるから、病院としては、看護師を増やしたいはずだ。

奈須:なんで増やさないの?

石崎:看護師不足と言われているでしょ。前に勉強したじゃないか〜。もう、酔っぱらった?

奈須:そうだよね。入院基本料のことなんかで教えてもらったよね。看護師不足で求人出しても応募がないものね。

石崎:看護学校の求人なんか、卒業予定者1人に対して、50件くらいあるんじゃないかな。

奈須:そんなにすごいの。

石崎:うちの病院でも看護部長の出張の大半は、看護学校訪問だよ。院長が学校訪問している病院も珍しくない。以前も東京の有名大学病院の院長が看護学校を回って看護師のリクルートをしたのは、話題になったよね。

奈須:時代がかわったね。私の時は、そんなにすごくなかったな・・・

 そんな話をしている内に、おひらきの時間になった。仕事熱心な2人は、飲みながら、結局仕事の話をしていたのであった。おっと、でももちろん患者の話はしていない。仕事の話でも、患者のことを外でしゃべると個人情報保護違反である!!