20 物品は誰が管理するのか 運よく!?またもや抜擢

 昼のカンファレンスで、医療材料の期限切れが多いとの意見があり、早速、奈須が材料棚を確認した。一緒に、若手の元気印である七瀬が手伝ってくれた。

七瀬:奈須師長、期限切れが多すぎませんか?業務改善しないといけない気がします。

奈須:そうね。思ったより期限切れが多すぎるね。あっ、こんな高い材料まで切れてるよ。

七瀬:私が思うに、材料を補充するときに、前から置いているんじゃないですか?それで、手前から使ってるような気がします。

奈須:古いものから使うのが基本だよね。明日のカンファレンスで言うわ。それと、物品管理の担当者を決めないといけないわね。これまで、気づいたら誰かがやればいいとしてきたけど、やっぱり担当者が必要ね。

七瀬:クラークの加藤さんなんかどうですか?

奈須:加藤さんは、まだ、経験が浅いから欠品されたりすると病棟業務が止まってしまうから、当面は、七瀬さんにお願いするわ。

七瀬:がんばります。

奈須:私は、根田師長の病棟はどのように物品管理をしているのか聞いてくるわ。

奈須が、根田師長の病棟へ行くと、

奈須:根田師長、物品管理のことで少しお時間よろしいですか?

根田:ちょうどよかった。これから斉藤部長のところに、物品管理のことで相談に行くところだったのよ。

奈須と根田は齋藤部長の部屋へ行った。

斉藤:あら、奈須師長、どうしたの?

根田:奈須さんは、物品管理に興味があるそうです。

斉藤:ちょうど、よかった。これから根田師長と相談して、院内の物品管理を見直そうとしていたのよ。担当になってくれる?

奈須:えっ!物品管理の担当ですか?私は教えてもらいに来たのですが・・・。

斉藤:何とかなるよ。やる気の問題だよ。物品管理の勉強も兼ねて、物品管理の業務改善の委員になってください。

奈須:はあ・・・分かりました。何とかやってみます。

斉藤:奈須師長は、タイミングが良いのよ。このタイミングの良さも実力のうちだからね。さて、根田師長、院内の物品管理の現状について、簡単に報告してください。

根田:院内の物品管理の現状は、惨憺たるものです。外来、病棟、手術室・中材が、すべて異なる方法で物品管理しています。その中で、管理が一番できていると思われるのは中材です。中材は、定数を決めて物品を管理しています。

斉藤:という方法ですね。中材は、手術などで使う物品が多いから、きちんと管理しないと外科部長から注意されるからね。他の部門は?

根田:ほかは、師長が管理していたり、担当の看護師を決めて管理させたり、病棟クラークが管理したりしていました。一番ひどい所は、業者にすべて任せていました。

斉藤:それは、どこ?

根田:鈴本師長の病棟です。

斉藤:まったく、管理する気がないね。さて、根田師長と奈須師長は、これから病院の物品管理の方法について調べてください。次の師長会で発表してもらいます。物品管理の方法を看護部は、標準化するから、そのことを踏まえてまとめてください。

根田、奈須:分かりました。

 部長室を出ると、根田が奈須へSPDについて調べてくれと依頼をした。奈須は、メモをして、業務が終わったら調べようと病棟へ戻って行った。

 成り行きで看護部門の物流を考えることになった奈須は、根田師長から依頼があったSPDについて調べることにした。管理は、これまで業務を行ってきた分野と用語が違うので、難しく感じられる。奈須は、インターネットでSPDについて検索してみた。SPDとは、Supply Processing & Distributionの略であることがまず分かった。英語の意味からすると「供給の計算と配布」となる。物品の必要量が計算され運ばれてくることがSPDの真意である。言葉からすると理想的だったため、奈須は、SPDについて調べることにやる気がわいてきた。

 さらに調べていくと、SPDとは、最適な在庫数の把握や円滑な物流システムの構築を行うことを理想とした物流管理手法ということがわかった。SPD専業の業者をはじめとして、日本の病院でSPDを採用されている。SPDのメリットは、細かい物の流れを把握することにある。コンビニエンスストアのように、病院でも、コンピュータで在庫管理を行うことにより、リアルタイムで物品の流れを把握することを理想としている。SPDを導入している病院では、バーコードによって、物品の入庫と出庫を管理している。日々の在庫管理は、年度末に行う医療材料の棚卸の負担だけでなく、期限切れの材料を極力減らしてくれる。さらに、の算定漏れも減少させることが可能だということがわかった。

さらに、病院に導入する場合について調べ、次の師長会での発表に間に合うように資料を作った。