18 効果的に新人教育をするために 教育プログラムの活用

 今度、病棟に大卒の新人が入職します。この新人をドロップアウトしないように、どのように教育していくのか、病棟の教育担当の七瀬祥子(ななせしょうこ)と話し合っています。

奈須:七瀬さん、今度入職する新人に誰をプリセプターにしようか?

七瀬:私がやりますよ。大卒の看護師にも興味ありますから。

奈須:そういえば、看護師も大卒が当たり前になりつつあるね。

七瀬:そうですね。

奈須:教育は、どうする?

七瀬:看護部の新人教育マニュアルをうちの病棟用に、少し直してみます。それでやってみます。目標は、6カ月で当直に入れることですね。

奈須:あまり目標を高くして、無理強いはしないでね。

七瀬:分かってます。退職されたら、教えたことが無駄になりますからね。

奈須:よろしくね。

 新人の教育は、非常に難しいものがある。新卒や中途採用によっても別々に教育プログラムを定めなければならない。新卒の教育は、現場がわからない者への教育として、一から教えればいいが、中途採用は、そうはいかない。まず、職員にとって中途採用は、仕事ができるはずという固定観念がある。この固定観念があることにより、事故が起きたり、トラブルが起きる。このトラブルを避ける方法はあるのだろうか。

 数日後、七瀬から新人教育のプログラムを確認してほしいとの依頼があった。そこで、昼休みに食事をしながら確認することにした。

奈須:教育プログラムが、よくできてるね。

七瀬:ありがとうございます。ここ数日、睡眠時間を減らして作りました。

奈須:気になった点は、このプログラムでは、教える人と技術の評価する人を誰がやるの?

七瀬:病棟で空いている人が教えればいいと思っていました。

奈須:それではだめよ。理想は、決まった人が教え、評価は違う決まった人がやることね。それが難しいのであれば、教える人はバラバラでもいいから評価する人を一定にすることね。

七瀬:なぜですか?

奈須:人によって、教え方が違うし、評価も違うからなの。新人が技術を習得したかどうかは、品質の管理と一緒なの。だから、教える人や評価する人は一定がいいの。でも教える人と評価する人は、別々の人にしてね。評価が甘くなるからね。教え方は、看護提供マニュアルを手本にして、皆に教えてもらい、七瀬さんが評価したらどうかな。教育のプログラムは、クリティカルパスのように、作るとわかりやすくていいわよ。

奈須は、メモ帳に図を描きだした。図7)は、シンプルに、横軸に時間、縦軸に知識・技術と書かれていた。

奈須:学んでもらいたい知識や技術を縦軸に、習得してもらいたい期間を横軸にとっていくといいかな。例えば、入職1週間で、ベッドメイキングやアナムネがきちんととれるようになるといったことだね。この項目のところには、教えたかどうかわかるチェック欄を設けて評価し、技術的に問題がないか確認されたことが分かるように、チェックができるようにすることです。こうみるとクリティカルパスと同じでしょ。このチェック表を使えば、中途採用の看護技術の評価表にも使えるのよ。

七瀬:このような表に直してみます。新人用と教育者用の2枚でいいですね。

奈須:いろいろ大変だと思うけど新人の教育よろしくね。

 日常業務が忙しい中で、効率的に教育するためには、きちんとした教育プログラムが必要となる。何をいつ頃、習得できるのかがわかることにより、新人も安心して、教育を受けることが可能となる。