15 急性期病院と地域医療連携 「地域医療連携室でございます。」

 退院患者の要望で、隣町の病院に電話をかけた時だった。入院担当の看護師に電話したつもりが、回された先が地域医療連携室という部門だったのである。日本総合病院に地域医療連携室がなかったため、奈須は一瞬、固まってしまった。地域医療連携室は、病院にとって、地域の医療、介護、福祉の窓口となる部門である。地域医療連携室担当の医師(大抵は副院長が兼任)や看護師(師長クラス)、事務員が地域からの紹介患者の受け入れや退院患者の他院への紹介のために仕事をしている。地域連携室は、平均在院日数短縮に向けて、スムーズな退院のための転院先の確保や病棟の稼働が落ちないように入院患者を確保することを目的に置かれている。DPCが導入されてからは、多くの急性期病院で地域医療連携室が作られた。

奈須:山本先生!Bさんの転院先を見つけました。隣町のA病院です。

山本:助かったよ。俺が当たったところは、病棟が一杯だって断られたよ。

奈須:A病院の地域医療連携室に、先生からの紹介状をFAXしたら、来週に転院可能だということでした。

山本:ところで、紹介状は、主治医御中でいいのかな。

奈須:転院してから担当医が決まるみたいなので、主治医御中でいいそうです。

山本:そういえば、最近は、紹介の方法が変わってきたね。これまでは、医師と医師の間で紹介したけど、病院と病院間で地域医療連携室を通して紹介する場合が増えてきたね。地域の医療機関の間で、疾患ごとに治療方針などについて一定のルールを決めている。地域医療連携クリティカルパスなんかは、紹介の究極だね。便利なようだけど、少し寂しいね。まあ、そうは言ってもみんな忙しいから仕方ないか。

奈須:そういえば、うちの病院では、地域医療連携室を作らないのですか?

山本:先月の医局会では、院長から提案があったね。でも、責任者となる担当の医師が決まらなかったので、ペンディングになってるよ。

奈須:地域医療連携室ができれば、師長や主任が転院先を探さなくても良くなりそうですね。

山本:そうだね。転院先を探す手間はなくなりそうだよ。

奈須:先生が地域医療連携室の責任者に立候補して、早く作ってください(笑)。

山本:仕事を増やすなよ。(笑)。